Matthewの備忘録

忘れたときはここを見ろ。何か書いてある。

冬の第二の使者到来

第一の使者はもちろん「雪」であるが、第二の使者は「流氷」である。実家がある枝幸町の沖合い10kmのところまできているらしい。ただし、風向きが変わったので、いまどこにいるかは分からない。

流氷というと流氷観光砕氷船のガリンコ号がある紋別とか、オーロラ号がある網走の名がすぐにあがると思うが、シーズン最初に流氷が現れ易いのは枝幸沖だと思っている。統計情報がないので、あくまで感覚なのだが。ここさいきんの報道をみていると最初に現れるのは枝幸だと思う。だが、この自治体は観光地化されていないので、流氷は浜からみるだけだ。

なぜ最初にこの地方に流氷が到来するのか、長年不思議に思っていたが、最近北海道大学などの研究で明らかになった東樺太海流の勢いが冬に増して、ちょうど枝幸沖にぶつかるからではないかと思っている。流氷は風の影響が強いけど、海流については東樺樺太海流の影響が一番大きいだろう。また、この海流はサケ、なかでもメジカの通り道になっているのではないかと思っている。日本で一番サケがとれるのは、昨年の情報だが、羅臼、その次が常呂(たしか)なのだが、その次は枝幸である。ただ、羅臼常呂は北海道に遡上する鮭の割合が多いそうで、ブナとよばれる婚姻色に変化したサケの割合が多いらしい。それに対して、枝幸では、シーズン初頭は婚姻色ではない銀色の鮭、後半は山形あたりに遡上する卵巣や精巣が成熟するまえの脂がのったメジカ鮭の割合が多くなる。回遊ルートが異なっていそうで、前述の東樺太海流にのってやってきているのではないかと思っている。

余談だが、枝幸で捕獲されているメジカザケの稚魚を育て放流している山形県の山村の活動者に政府から補助金がうちきられたため、枝幸あたりの漁協などに援助が求められているそうだ。因みに、この地方の漁業はメジカザケに限らず、他の地域に稚魚や稚貝などを依存している(ホタテ、カレイなど)。日本の鮭は輸出して、海外の鮭は輸入しているという。価格差はあると思うが、天然の脂の乗った鮭を食さず、態々養殖のPCBなど濃縮汚染された鮭を輸入してまで食べているのか不思議である。一方、ヨーロッパや中国は北海道の鮭を喜んで輸入しているそうだ。政府は何を考えているのだろうか。

日本産の鮭があまり食されないのは、多くの日本人の鮭の食べ方にも問題があるように思う。あまり脂ののっていないパサパサな塩辛い鮭ばかりを食べているからおいしいものだと思われていないように思う。そんな鮭を食べるくらいなら、私だったら富山あたりであがったブリの切り身を買って食べる。しかし、メジカ鮭や銀色に輝いたアキアジだったら荒巻鮭にしなくても味はよいし、最近は冷凍技術も進んでいるから保存しながら長く食べられるだろう。20年以上前の学生時代の話になるが、学生寮に暮らしていて、実家からメジカザケを塩焼きしたものを大量に実家から送られてきたことがあった。一人では食べきれないので、休日でもあったので、同室の学生や友人、近くの部屋にいた普段はほとんど話すこともないたまに先輩に呼ばれて一緒に麻雀するぐらいでどちらかといえば敵対視されるような他のクラスの学生にも配った。暫くして、そんな敵対視されるような学生から「おいしい」との一言をもらった。中にはもう一つ持って帰った学生もいた。普段食べていた寮の飯がまずかったのも影響しているかもしれないが(笑)、その味は確実に覚えてもらったに違いない。

そんなことを思い、思い出しながら流氷の接岸を待っている。